paper sky

マンガ作家、コジママユコのweblogです。

矢印

秋がはじまっている。

 

熱気や日差しで空間が飽和するようだった夏に風が入り始めている。秋は風から始まる。秋のやつはいつも吹き込むようにスマートに季節をぬりかえてしまう。

 

 秋の明確な特徴。何だと思いますか。私にとっては夕空。秋になりかけている今、陽が落ちて見えなくなった直後くらいの夜空を見上げてみてください。地獄のように美しい色をしているから。ほんとうにこの世のものと思えないくらいだから。

 

秋の空の地獄具合に気づいたのは大学生か大学院生の頃だった(うろ覚え)。卒論か修論(うろ覚え)で気分が不安定になっていて、ふと道のむこうのショッピングモールの上にものすごい情感の空が広がっていることに気づいたのだ。恐ろしくて動悸が走った。

だいたい、空とその下の地上の町並みは合わない。シュールレアリストのコラージュみたい。こつこつ清潔に建設した町に地獄を合わせたらそりゃあ浮いているのだ。わたしは空があまりにも美しい(イコール恐ろしい)とき、現実感がなくなって書き割りの絵画をバックに置いたように見えてしまう。

(だからわたしのブログのタイトルはpaper skyだ…)

 

このエントリ、本当は秋空のイラストを添えようかと思っていた。でも必要はないのだ。秋空はきょうも明日も全ての土地の上に広がっているから、あなたの空を見てみて、という方が秋空の美しさは伝わる(※今季節が秋じゃない国にいる方は秋になったら見て)。秋空をイラストレートすることと、秋空について書くことはほんとうは同じだ。全ての表現は記号で、記号の役割は矢印だから。実験的に表現で遊ぶ場合は除くけれど、基本的に絵にしろテキストにしろ、記号にはそれが指し示す内容がある。いちばん大切なのはその矢印の先。