学校がしんどいほどまともな感受性のために
「#学校がしんどい君へ」という企画に参加している。
本日は、朝日新聞社 @withnewsjp との連動企画、
— コルクBooks|α版公開中 (@corkbooks) July 22, 2018
お題は #学校がしんどい君へ #withyou
学生のとき、しんどかったことはありませんか?
しんどそうな友達を見たことはありませんか?
10代に届ける #学校がしんどい君へ をお寄せください。https://t.co/AVCRzOTrWB#コルクBooks @corkbooks
果たしてこのテーマで描いていいのかな?
というのが最初に思ったことだった。with you. だって、現実に、今、私の隣にだれも10代の人は、いないけれども。こんなに切実な人の命が関わるようなテーマで、勝手な解釈を押し付けるのは偽善ではないのか?
しかし、結局描くことにした。わたしが学校がしんどかった時、学校がしんどいことが恥ずかしくて恥ずかしいことを絶対に知られたくなくて、何重にもうすいセロハンを巻かれたような自意識の地獄のなかで暮らしていたときのことを、作品に描きとめておきたいな、と思った。だから、本当は私の作品はwith me かもしれない。I am with me.(あれ、あたりまえだ‥)
10代だった時の不幸は、今思うと「自分のことを他人が語りすぎる」ことにあったと思う。お説教されすぎるというか。例えば、「学校がしんどい‥」と子供がつぶやいたとき、「学校がしんどいなんて怠けだ」とか、「社会はもっとしんどいのに学校でくじけてはいけない」とか、「私はこうである」と言うと、「おまえは本当はこうだ(こうすべきだ)」と言い返されてしまう。そして、大人と子供の言ってることが違うと、周りは大人の方を信用する。
感情は、感情の輪郭をすこんとそのまま言葉で抽出できた時に、自覚されるのだと思う。感情の認識の枠組みは言葉だと思う。だから、ずれた言葉として取り出されてしまうと、自分の感情がわからなくなる。学校にいたとき、周りの言葉が分からず自分の気持ちが認められなかったときの恐ろしい所在無さは、言葉を失っていたということだったのだろう。
(周りが言っている理屈が正しいのか、私の違和感が正しいのか)とずっと思っていた。私が間違っているのかな、とずっと思っていた。そうじゃないよ。正しいのは、違和感の方だったのよ。
だから、もし今いる環境の中に自分の言葉がなかったら、本の中に自分の感情を探すことをお薦めしたいと思う。言葉は公共物だから、感情を表す言葉はまずは自分が書かなくても良い。文豪だって言葉を発明はしていなくて、本を読むことによって言葉を学んだのだから。学校がしんどい程まともな感受性は、かならず無数にある言葉の中から、あなたの言葉を見つけられると思う。ちょっとでも不快だなと思ったら、それは今のあなたのための本ではないから読まなくていい。
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最後にすこしだけ、私の選ぶまともな感受性のための本を紹介します。
1.ひとかげ
10代の頃熱中して読んだよしもとばなな(吉本ばなな)さん。カップルの話なのだけれど、乗り越えられない不幸や分かり合えない感情を無かったことにせずに、それでも相手を愛そうとする欲望の美しさに打たれる。
2. 3月のライオン
今一番元気になるマンガ。疎外や失敗を正面から描ききっていて、すばらしい。失敗しても人生はつづくのだ。私は林田先生が好きです。女の子なら、香子ちゃん。彼女は救われるのだろうか‥。
3.キリンの子
いま孤独を書かせたらこの人の右に出る人はいないのではないか。歌人「鳥居」による第一歌集。「空しかない校舎の屋上ただよいて私の生きる意味はわからず」。巻末の掌編小説『エンドレス・シュガーレス・ホーム(第三回路上文学賞大賞)』もすばらしい。
‥ほかにも、マンガで引用した川上未映子『先端で、さすわさされるわそらええわ』、芥川龍之介『歯車』、ゲーテ『若きウェルテルの悩み』、森田正馬、最果タヒ、市川春子、などなどなどなどたくさんあるけど、鬼長いブログになってしまう‥!本はとてもいいよ、人と違ってどれだけ寄りかかっても壊れないから。永遠の味方になります。
【追記】
企画内でなんと私のマンガが大賞に選ばれ、インタビューして頂きました。
あわせてお読みください。